ダグラス・サーク傑作選

ダグラス・サーク傑作選

メロドラマの名匠による愛と悲しみにみちた珠玉の代表作、一挙上映 『天が許し給うすべて』『風と共に散る』『間奏曲』『翼に賭ける命』『悲しみは空の彼方に』 3月28日(金)〜4月17日(木)YEBISU GARDEN CINEMAにて開催決定

ダグラス・サーク傑作選
ダグラス・サーク傑作選
公開当時は通俗的過ぎると真っ当な評価を得られなかったものの、今やメロドラマの巨匠としてその後の映画人たちに多大な影響を与えるダグラス・サーク。ナチスの弾圧を逃れアメリカへ亡命、ハリウッドで様々なジャンルを手がけてきたサークだったが、特にキャリア後期に手がけた作品はいずれも屈指の名作揃い。秘めた恋に身を焦がし、社会通念や常識と対峙しながらも、自らの道を歩んでいく女性たちの物語は“メロドラマ”の枠を超え、今なお大きな感動をもたらしてくれる。圧倒的な映像美で紡ぎ出されるつつましくも情熱的な極上の映画体験をぜひスクリーンでご堪能ください。

作品紹介

天が許し給うすべて
天が許し給うすべて天が許し給うすべて
天が許し給うすべて All That Heaven Allows
脚本:ペグ・フェンウィック 撮影:ラッセル・メティ 音楽:フランク・スキナー
出演:ジェーン・ワイマン、ロック・ハドソン、アグネス・ムーアヘッド、コンラッド・ネイジェル
1955年/89分/アメリカ/カラー
©1955 Universal Pictures Co. Inc. RENEWED 1983 by Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
郊外の邸宅に住む未亡人ケリー。大学生の子供たちは家を出て子育てもひと段落、友人にも恵まれ気ままな一人暮らしを満喫していた。ある日、若い庭師ロンと出会う。最初は言葉を交わす程度だったが、真剣に愛し合い結婚を考えるようになる。しかし知人や子供たちから理解されず、悩んだ末に別れを切り出すが……。何不自由なく生活してきた女性が、周囲の好奇な目や反発にさらされながらも確かな一歩を踏み出すまで。テクニカラーの鮮烈な色彩、周到に計算された構図や美術など、映画芸術のお手本としても今なお燦然と輝く古典的名作。
風と共に散る
風と共に散る風と共に散る
風と共に散る Written on the Wind
脚本:ジョージ・ザッカーマン 撮影:ラッセル・メティ 音楽:フランク・スキナー
出演:ロック・ハドソン、ローレン・バコール、ロバート・スタック、ドロシー・マローン
1956年/100分/アメリカ/カラー
©1956 Universal Pictures Co. Inc. RENEWED 1984 by Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
石油王として名高いハドリー家の会社で働くミッチは、放蕩者の御曹司カイルと幼馴染み。カイルの妹マリリーはミッチに恋焦がれているものの、ミッチはカイルの新妻ルーシーに密かに思いを寄せていた。ルーシーのためにアルコールを断ち、生活を改めようとしていたカイルだったが、自分が子供を産めないと知って自暴自棄になり、やがて悲劇が訪れる。テキサスの荒涼とした大地をスポーツカーが切り裂く冒頭から、アクセル全開で駆け抜けるあまりに激しい四角関係の行方。マリリーに扮したマローンがアカデミー賞助演女優賞を獲得。
間奏曲
間奏曲間奏曲
間奏曲 Interlude
脚本:ダニエル・フックス、フランクリン・コーエン、イネス・コック、ドワイト・テイラー 撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ 音楽:フランク・スキナー
出演:ジューン・アリソン、ロッサノ・ブラッツィ、マリアンネ・コッホ、フランソワーズ・ロゼー
1957年/89分/アメリカ/カラー
©1957 Universal Pictures Co. Inc. RENEWED 1985 by Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
新しい生活を夢見てドイツに赴任したヘレンは、同じアメリカ人医師モーリーから言い寄られる一方、コンサートホールで指揮者トニオに出会う。当初は不遜なトニオの態度に反感を覚えるものの、次第に彼の孤独や優しさに触れて恋心を抱くようになるヘレン。しかしトニオには病魔に冒された妻がいることが分かり、ヘレンはある決断を下す。ミュンヘンとザルツブルグの美しい風景をバックに、ふたりの男性の間で揺れ動くアメリカ人女性の戸惑いと選択。『心のともしび』(53)、『悲しみは空の彼方に』同様、ジョン・M・スタール監督作のリメイク。
翼に賭ける命
翼に賭ける命翼に賭ける命
翼に賭ける命 The Tarnished Angels
脚本:ジョージ・ザッカーマン 撮影:アーヴィング・グラスバーグ 音楽:フランク・スキナー
出演:ロック・ハドソン、ロバート・スタック、ドロシー・マローン、ジャック・カーソン
1957年/91分/アメリカ/モノクロ ©1957 Universal Pictures Co. Inc. RENEWED 1985 by Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
妻のラヴァーン、整備士ジッグスとともに飛行ショーで生計を立てている第一次大戦の英雄ロジャー。彼らを取材した新聞記者バークは、愛憎が複雑に絡み合うこの「ファミリー」にのめり込んでいき、ラヴァーンと心を通わせるようになるが……。フォークナーの「標識塔」を原作に、『風と共に散る』とほぼ同じキャストで映画化したサークの傑作。家族も自分の命も顧みない破滅的な男と、彼に振り回されながらも信念を貫こうとする人々を陰影に富んだ映像で描き出す。“標識塔”スレスレに飛ぶ飛行機と群衆をとらえたレースシーンはまさに圧巻。
悲しみは空の彼方に
悲しみは空の彼方に悲しみは空の彼方に
悲しみは空の彼方に Imitation of life
脚本:エレノア・グリフィン、アラン・スコット 撮影:ラッセル・メティ 音楽:フランク・スキナー
出演:ラナ・ターナー、ジョン・ギャヴィン、サンドラ・ディー、スーザン・コーナー
1959年/125分/アメリカ/カラー
©1959 Universal Pictures Co. Inc. RENEWED 1987 by Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
住む家のない黒人女性アニーを女中として雇い、共同生活を始めたローラ。一人娘を持つシングルマザーという同じ境遇のふたりは互いを信頼し、娘たちも実の姉妹のように育つが、白人の父を持つアニーの娘サラジェーンは母に複雑な思いを抱いている。ローラは女優として成功、二組の家族は経済的に恵まれるようになるものの、葛藤を抱えたまま美しい女性に成長したサラジェーンは家を出てしまい……。人種差別やショービジネス界の醜さを描きながらも、限りない人間への愛に満ちた代表作のひとつ。サーク最後の長編作品で、この後アメリカを離れスイスへとわたった。

SCHEDULE

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COMMENTS

蓮實重彦さん(映画評論家)
ヨーロッパ生まれながら、テクニカラーによるシネマスコープ画面というハリウッドならではの華麗な技法を、あたかも自分のために開発されたギフトだというかのように自在に駆使してみせたダグラス・サークは「傑作」と言う言葉など自分とは無縁の贅沢だというかのように、「傑作」を超えた繊細なフィルムを撮ってみせた。必見!
秦早穗子さん(映画評論家)
ダグラス・サークの目
ハリウッド映画全盛期、1950年代。定番メロドラマ形式を逆手に取って、ダグラス・サークが描く作品は、今こそ、光を増す。あれから、80年。人々の暮らしは変わった。本当にそうだろうか?ドイツから亡命、名前もダグラス・サークと変え、アメリカ方式の中で、人間―男と女―の本質をさりげなく、服装、マナー、言葉の端に忍ばせる。底流には、人種、宗教、戦争、愛と死がある。ユダヤ人の妻、ひとり息子の戦死。ドイツ人の彼自身の問題も含め、揺らぎ、迷い、ときめく感情が、サーク映画の中で、静かに火花を散らす。
濱口竜介さん(映画監督)
「かなしみのハッピーエンディング」、再び。
四の五の言わずに、泣いちゃいな!
坂本安美さん(アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)
まわり続ける歯車、そこから抜け出すことができずにもがき、翼を傷つけ、血を流す者、情熱を滾らせ、生き、愛し合う者……。
ひたすら闇へと進んでゆくかのような21世紀を生きる私たちをサークの映画の明白さが痛いほど眩く突き刺す。
渋谷哲也さん(日本大学文理学部教授/ドイツ映画研究)
『天が許し給うすべて』のラストカットは、
彼に私淑したファスビンダーの『不安は魂を食いつくす』と対をなす。
ハリウッドのようにしかし虚偽でない映画を撮ろうとして、
絶望を直截に語ったファスビンダーはまだ若かった。
円熟したサークは諦念に包まれたハッピーエンドを提示する。
それがとても恐ろしい。
町山広美さん(放送作家)
居場所を間違えている。
女たちのその苦悩を、赤く整えた唇の震えを、違う国に逃れて違う名前を名乗る監督は様々に撮ってみせた。
麗しい豪華セットの数々、繊細に仕立てられた色あざやかなドレス、ロック・ハドソンの完璧な骨格、ドロシー・マローンの分厚いつけまつ毛‥ 過剰なまでに作り込まれた表層の美の下に、どうしようもなく粘つく欲情や願望。
正しい居場所を見つけることは難しいが、ダグラス・サークの映画を見るその間、彼方へと居場所を離れることは可能だ。
矢田部吉彦さん(前東京国際映画祭ディレクター)
あまりに鮮やかな色遣いはモダン・アートの域にあり、極められたアート性が物語の壮大な虚構性を抽象の域に昇華する。
その過程でフィクションから絞り出されるのは、真実のエッセンスであり、つまりは愛だ。ドラマを煮詰めて抽出されたエッセンスであるが故に、サークの描く愛は、その後のいかなる形の愛の物語にも適用が有効なのだ。
愛の無い人生は偽りの人生/Imitation of Lifeだと説くサーク作品こそは、全ての現代映画の土台となっているのである。
【ダグラス・サーク傑作選】『天が許し給うすべて』『風と共に散る』『間奏曲』『翼に賭ける命』『悲しみは空の彼方に』
3月28日(金)〜4月17日(木)YEBISU GARDEN CINEMAにて開催3月28日(金)〜4月17日(木)YEBISU GARDEN CINEMAにて開催